EMC試験に落ちたときに確認したい原因と対策の進め方

EMC試験に落ちたときに確認したい原因と対策の進め方

EMC試験で基準値を超えてしまった場合、まず重要なのは、すぐに部品を追加することではありません。どの試験項目で、どの周波数帯に問題が出ているのかを整理し、原因を切り分ける必要があります。

EMCの問題は、基板だけでなく、電源、グラウンド、ケーブル、筐体、部品配置など複数の要素が関係していることがあります。

この記事では、EMC試験に落ちたときに確認したい主な原因と、効率よく対策を進めるための流れを解説します。

まずどの試験項目で問題が出たか確認する

EMC試験には、放射エミッションや伝導エミッション、ESD、放射イミュニティなど、さまざまな試験があります。

そのため、「EMC試験に落ちた」という結果だけでは、原因を絞り込むことはできません。

まずは、どの試験項目で基準を超えたのかを確認しましょう。

たとえば、伝導エミッションで問題が出た場合は、電源ラインや信号線を通じてノイズが外部へ流れている可能性があります。

一方、放射エミッションで基準を超えた場合は、基板やケーブル、筐体などから電磁波としてノイズが放射されている可能性があります。

試験項目によって確認すべき場所が変わるため、最初に問題の種類を整理することが大切です。

問題になった周波数を確認する

次に確認したいのが、どの周波数でノイズが大きくなっているかです。

EMC試験の結果には、周波数ごとのノイズレベルが表示されます。

特定の周波数だけ大きなピークがある場合は、その周波数と製品内部の動作周波数を照らし合わせます。

たとえば、クロック周波数やその高調波、スイッチング電源の動作周波数と一致していれば、発生源を絞り込みやすくなります。

モーターやPWM制御を使用している場合は、そのスイッチング周波数も候補になります。

単に「ノイズが大きい」と見るのではなく、周波数から発生源を推測することが重要です。

ケーブルがノイズを放射していないか確認する

放射エミッションで問題が出た場合、基板だけでなくケーブルも確認します。

電源線や通信線に高周波のコモンモード電流が流れると、ケーブルがアンテナのように働き、ノイズを放射することがあります。

ケーブルの位置や長さを変えたときに測定値が大きく変化する場合は、ケーブルからの放射が関係している可能性があります。

対策として、コモンモードチョークやフェライトコアを追加したり、ケーブルの配線経路を見直したりする方法があります。

ただし、ケーブル側だけを対策するのではなく、なぜ高周波電流がケーブルへ流れているのかを確認することも大切です。

電源とグラウンドを見直す

EMC問題では、電源やグラウンドが原因になっていることも少なくありません。

スイッチング電源や高速デジタル回路から発生したノイズが電源ラインへ回り込むと、伝導エミッションが増えることがあります。

また、グラウンドプレーンが分割されていたり、高速信号のリターンパスが途切れていたりすると、電流ループが大きくなり、放射ノイズが増える可能性があります。

デカップリングコンデンサの配置、電源フィルタ、グラウンドプレーンの連続性、リターン電流の経路などを確認しましょう。

回路図上では問題がなくても、実際の基板レイアウトによってノイズが発生することがあります。

スイッチング回路の波形を確認する

スイッチング電源やMOSFETを使用している場合は、オシロスコープで波形を確認します。

スイッチング時にリンギングや大きなオーバーシュートが発生していると、高周波成分が増え、EMC試験で問題になることがあります。

この場合は、スイッチングループを小さくする、ゲート抵抗を調整する、スナバ回路を追加するといった対策が考えられます。

ただし、スイッチング速度を遅くしすぎると電力損失や発熱が増えることがあります。

波形、ノイズ、効率のバランスを確認しながら調整することが重要です。

筐体の隙間や開口部も確認する

金属筐体を使用していても、隙間や開口部が原因でノイズが漏れる場合があります。

通風口やコネクタ部分、パネルの継ぎ目などは、シールド性能が低下しやすい部分です。

特に高周波では、小さな隙間でも放射ノイズに影響することがあります。

必要に応じて、導電性ガスケットを使う、継ぎ目の導通を改善する、開口部を小さくするといった対策を検討します。

また、シールドと基板グラウンド、シャーシグラウンドの接続方法も確認しましょう。

対策は一度に一つずつ試す

EMC試験に落ちると、複数の対策を一度に追加したくなることがあります。

しかし、フェライトコア、コンデンサ、シールド材などをまとめて変更すると、どの対策が有効だったのか分からなくなります。

できるだけ一度に一つの条件だけを変更し、対策前後の測定結果を比較しましょう。

たとえば、フェライトコアを追加したときに特定の周波数だけ大きく改善したのであれば、その経路を流れる高周波電流が原因だった可能性があります。

対策内容と測定結果を記録しておくことで、原因を効率よく絞り込めます。

本試験前に再度プリコンプライアンス評価を行う

対策後は、いきなり本試験を受け直すのではなく、可能であればプリコンプライアンス試験で確認します。

本試験より簡易的な環境でも、問題になっていた周波数のノイズがどの程度低減したかを確認できます。

このとき、規格値をわずかに下回るだけではなく、ある程度の余裕があるかを見ることも重要です。

測定環境によって結果に差が出る可能性があるため、本試験では一定のマージンを確保しておくと安心です。

まとめ

EMC試験に落ちた場合は、まず試験項目と問題になった周波数を確認し、原因を切り分けます。

放射エミッションであればケーブルや筐体、リターンパス、伝導エミッションであれば電源ラインやフィルタなどを重点的に確認します。

また、スイッチング波形やデカップリングコンデンサ、グラウンド設計も重要です。

対策は一度に複数行わず、一つずつ変更して結果を比較しましょう。

EMC試験への対応では、闇雲に部品を追加するのではなく、「どこで発生し、どこを通り、どこから外へ出ているのか」を順番に追うことが、効率よく原因を特定するポイントです。