プリコンプライアンス試験とは?EMC本試験前に確認しておきたいポイント
EMC試験では、製品から発生する不要な電磁ノイズや、外部からのノイズに対する耐性などを確認します。しかし、正式な試験所で本試験を受けてから問題が見つかると、設計変更や再試験が必要になり、開発スケジュールやコストに大きな影響が出ることがあります。
そこで活用されるのが「プリコンプライアンス試験」です。本試験と完全に同じ環境ではなくても、事前にノイズの傾向や問題になりそうな周波数帯を確認しておくことで、試験不合格のリスクを減らしやすくなります。
この記事では、プリコンプライアンス試験の役割や本試験との違い、事前に確認しておきたいポイントを解説します。
プリコンプライアンス試験は本試験前に行う事前評価
プリコンプライアンス試験とは、正式なEMC適合性試験を受ける前に行う事前評価のことです。
製品が規格値を満たせそうか、どの周波数帯でノイズが大きいか、どの部分に対策が必要かを早い段階で確認することを目的とします。
一般的には、本試験と同等の測定環境を完全に再現するわけではありません。社内の簡易測定環境や小規模な試験設備を使い、スペクトラムアナライザ、近傍界プローブ、電流プローブなどを用いて確認することがあります。
そのため、プリコンプライアンス試験の結果だけで規格適合を保証できるわけではありません。
あくまで、本試験で問題になりそうな部分を事前に見つけるための評価です。
本試験との違いは測定環境と判定の位置づけ
EMC本試験は、対象となる規格や試験方法に沿って、決められた測定設備や条件で実施します。
一方、プリコンプライアンス試験は、開発途中でも実施しやすい簡易的な評価です。
本試験では、測定距離、アンテナ、機器の配置、周囲環境なども規格に従う必要がありますが、プリコンプライアンスでは条件を簡略化することがあります。
そのため、測定値が本試験と完全に一致するとは限りません。
重要なのは、絶対値だけを見るのではなく、どこにピークがあるか、対策前後でどの程度改善したかといった傾向を確認することです。
放射ノイズは周波数ごとのピークを確認する
放射エミッションの事前確認では、どの周波数帯でノイズが強く出ているかを把握します。
たとえば、クロック周波数やその高調波、スイッチング電源の動作周波数などと一致するピークが見つかる場合があります。
近傍界プローブを使えば、基板上のどの部分から高周波ノイズが強く出ているかを確認できます。
また、ケーブルの位置や長さを変えたときに測定値が大きく変わる場合は、ケーブルがアンテナのように働いている可能性もあります。
プリコンプライアンス段階で発生源と放射経路をある程度絞り込めれば、本試験前に配線やシールド、フィルタなどを見直しやすくなります。
伝導ノイズは電源ラインも確認する
EMCでは、空間へ放射されるノイズだけでなく、電源線などを通って外部へ流れる伝導ノイズも問題になります。
事前評価では、LISNなどを使用して電源ラインに流れるノイズを測定する方法があります。
スイッチング電源を搭載している機器では、スイッチング周波数やその高調波が目立つ場合があります。
ノイズが大きい場合は、電源フィルタ、デカップリングコンデンサ、コモンモードチョークなどの配置や特性を見直します。
このときも、本試験と数値を完全に一致させることより、対策前後の変化を比較することが重要です。
製品の動作モードをそろえる
EMC試験では、製品の動作状態によってノイズの出方が変わります。
プリコンプライアンス試験でも、本試験で想定される動作状態をできるだけ再現しておきましょう。
たとえば、モーターを使用する製品であれば回転中、通信機器であれば通信中など、ノイズが大きくなりやすい条件で確認します。
複数の動作モードがある場合は、一つだけを測定するのではなく、代表的な状態を比較しておくと安心です。
本試験だけ別の動作条件になってしまうと、事前評価では見つからなかった問題が表面化する可能性があります。
対策前後の条件を変えすぎない
プリコンプライアンス試験では、改善効果を比較できるように測定条件をそろえることも大切です。
ケーブルの位置、基板の向き、電源条件、測定機器の設定などが毎回大きく変わると、部品変更による効果なのか測定条件による差なのか判断しにくくなります。
対策前の結果を記録し、一つずつ条件を変更しながら比較すると、どの対策が有効だったのかを確認しやすくなります。
フェライトコアを追加する、コンデンサを変更する、ケーブルの取り回しを変えるといった対策も、できるだけ一度に一つずつ検証しましょう。
規格値ぎりぎりではなく余裕を見る
プリコンプライアンス試験では、規格値をわずかに下回っているから問題ないと判断するのは避けたほうがよいでしょう。
簡易測定環境と正式な試験環境では、測定結果に差が出る可能性があります。
そのため、規格値に対してある程度の余裕を確保できているかを見ることが大切です。
特定の周波数だけ限度値に近い場合は、本試験前に発生源や伝搬経路を確認し、できる範囲でノイズを抑えておくと再試験のリスクを減らせます。
まとめ
プリコンプライアンス試験は、EMC本試験の前にノイズの傾向や問題箇所を確認するための事前評価です。
本試験と同じ結果を保証するものではありませんが、放射ノイズや伝導ノイズのピーク、ノイズ源、ケーブルや配線の影響などを早い段階で確認できます。
試験では、製品の動作条件を本番に近づけ、測定条件をそろえながら対策前後を比較することが重要です。
正式な試験を受けてから大きな設計変更が必要にならないよう、開発途中からプリコンプライアンス試験を活用し、十分なマージンを確保しながらEMC対策を進めましょう。