伝導エミッションと放射エミッションの違い|EMC試験では何を測定する?
EMC試験では、電子機器から外部へ出る不要なノイズを確認するために、「伝導エミッション」と「放射エミッション」を測定します。どちらも機器が周囲へ与える電磁妨害を評価するものですが、ノイズが伝わる経路や測定方法には違いがあります。
伝導エミッションは、主に電源線や信号線などの導体を通って外部へ出るノイズです。一方、放射エミッションは、機器や基板、ケーブルなどから電磁波として空間へ放射されるノイズを指します。
この記事では、伝導エミッションと放射エミッションの違い、それぞれの測定方法、EMC試験で確認されるポイントを解説します。
エミッション試験は機器から出るノイズを確認する
EMCは、電子機器同士が互いに大きな妨害を与えず、意図した通りに動作できるようにするための考え方です。
EMC試験には、機器から外部へ出るノイズを確認するエミッション試験と、外部からノイズを受けたときの耐性を確認するイミュニティ試験があります。
伝導エミッションと放射エミッションは、どちらもエミッション側の評価です。
ただし、測定する対象は異なります。
伝導エミッションでは、電源線や通信線などを通って流れ出る高周波ノイズを確認します。放射エミッションでは、機器から空間へ放射される電磁波を測定します。
この違いを理解しておくと、EMC試験で問題が見つかったときに、どこから対策すべきか判断しやすくなります。
伝導エミッションは配線を通るノイズを測定する
伝導エミッションは、電源線などの導体を通って機器の外へ流れ出す不要な高周波成分を測定します。
たとえば、スイッチング電源を搭載した機器では、スイッチング動作によって発生したノイズが電源ラインへ重なることがあります。
そのノイズが電源ケーブルを通じて外部へ流れると、同じ電源系統につながっているほかの機器へ影響を与える可能性があります。
測定では、LISNと呼ばれる回路網を使用して、電源線に現れるノイズを一定の条件で測定する方法が一般的です。
測定結果は周波数ごとのノイズレベルとして確認し、対象となる規格の限度値と比較します。
規格や製品分野によって測定周波数帯や限度値は異なるため、対象製品に適用される要求事項を確認する必要があります。
放射エミッションは空間へ出る電磁波を測定する
放射エミッションは、電子機器から空間へ放射される不要な電磁波を測定します。
ノイズ源になる代表的なものには、高速クロック、スイッチング電源、モーター、デジタル信号などがあります。
基板上で発生した高周波電流が配線やケーブルへ流れると、それらがアンテナのように働き、ノイズを空間へ放射することがあります。
放射エミッション試験では、アンテナを使用して機器から放射される電磁波を測定します。
測定時は、機器の向きやケーブルの配置、アンテナの高さなどを変えながら、ノイズが最も強くなる条件を確認することがあります。
伝導エミッションと同様に、測定した値を規格の限度値と比較して適合性を判断します。
伝導ノイズが放射ノイズにつながることもある
伝導エミッションと放射エミッションは別々の試験項目ですが、実際の回路では互いに関係しています。
たとえば、基板で発生した高周波ノイズがケーブルへ伝導し、そのケーブルから空間へ放射される場合があります。
つまり、最初は伝導ノイズとして流れていたものが、別の場所で放射ノイズになることもあります。
そのため、放射エミッションが大きいからといって、筐体のシールドだけを確認すればよいとは限りません。
ケーブルへ流れるコモンモード電流や、グラウンド、リターンパスなどが原因になっている場合もあります。
EMC対策では、発生源から伝搬経路まで追って確認することが重要です。
伝導エミッションが大きいときの主な対策
伝導エミッションで限度値を超えた場合は、まず電源ラインなどへノイズが流れ込む原因を確認します。
対策としては、デカップリングコンデンサの配置を見直したり、LCフィルタやコモンモードチョークを追加したりする方法があります。
スイッチング電源が原因の場合は、スイッチングノードの配線を短くする、電流ループを小さくする、スナバ回路を検討するといった方法もあります。
また、フィルタ部品を追加しても配置が不適切では十分な効果を得られないことがあります。
ノイズの入口や出口に近い場所へ配置し、グラウンドへの経路を短くすることも大切です。
放射エミッションが大きいときの主な対策
放射エミッションでは、ノイズを発生させている回路と、それを放射している部分を分けて考えます。
基板では、高速信号の配線を短くする、連続したリターンパスを確保する、電流ループを小さくするといった対策が基本です。
ケーブルがアンテナになっている場合は、配線方法の変更やフェライトコア、コモンモードチョークなどを検討します。
筐体から漏れている場合は、シールドや開口部、継ぎ目の設計も確認します。
重要なのは、最初から特定の部品を追加するのではなく、どこでノイズが発生し、どこから放射されているのかを切り分けることです。
EMC試験では両方を分けて確認する
伝導エミッションと放射エミッションは、ノイズの伝わり方が異なるため、EMC試験でも別々に測定します。
伝導側で問題がなくても、放射側で限度値を超えることがあります。反対に、放射エミッションは低くても、電源線を通じた伝導ノイズが大きいケースもあります。
そのため、片方の結果だけを見てEMC性能を判断することはできません。
試験結果に問題があった場合は、周波数ごとのピークや製品の動作条件を確認し、どの回路や信号と関係しているかを調べることが重要です。
まとめ
伝導エミッションは、主に電源線や信号線を通って外部へ流れる不要な高周波ノイズを測定します。一方、放射エミッションは、機器や基板、ケーブルなどから空間へ放射される電磁波を測定します。
両者は測定方法が異なりますが、実際の機器では互いに関係していることがあります。
EMC試験で問題が見つかった場合は、単に伝導か放射かを確認するだけでなく、ノイズの発生源、伝搬経路、放射する部分まで整理することが大切です。
伝導エミッションと放射エミッションの違いを理解し、フィルタ、配線、グラウンド、シールドなどから原因に合った対策を検討しましょう。