コモンモードノイズとは?発生原因と対策を解説
電子機器の設計では、EMC(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性)を考慮したノイズ対策が欠かせません。その中でも、EMC試験や製品評価で課題となることがあるのが「コモンモードノイズ」です。
コモンモードノイズは、電子機器の誤動作やEMI(Electromagnetic Interference:電磁妨害)の一因となる場合があります。しかし、ノーマルモードノイズとの違いや、どのような対策が必要なのか分かりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、コモンモードノイズの基本的な仕組みや発生原因、設計時に意識したい対策について解説します。ノーマルモードノイズとの違いや、EMC試験との関係もあわせて紹介します。
コモンモードノイズとは
コモンモードノイズを理解するためには、まずノイズ電流がどのような経路で流れるかを知ることが重要です。ノイズにはいくつかの種類があり、流れる経路によって発生要因や対策が異なります。ここでは、コモンモードノイズの基本と、ノーマルモードノイズとの違いについて解説します。
コモンモードノイズの基本
コモンモードノイズとは、複数の導体に対して同じ向きに流れる不要なノイズ電流のことです。例えば、電源ケーブルや通信ケーブルでは、本来の信号とは異なるノイズ電流が同じ方向へ流れることがあります。この電流がケーブルを通じて外部へ放射されると、EMIの原因となる場合があります。
コモンモードノイズは、スイッチング電源やインバータ回路、高速デジタル回路などで発生することがあります。ただし、発生の仕方や影響は機器の構成やレイアウトによって異なるため、一つの要因だけで判断することは適切ではありません。
電子機器全体のノイズ対策について詳しく知りたい場合は、「電子機器の設計で押えるべきノイズ対策の基本」もあわせて読むと理解が深まります。
ノーマルモードノイズとの違い
コモンモードノイズと混同されやすいものに、ノーマルモードノイズがあります。ノーマルモードノイズは、信号線や電源線の往復経路に流れる不要な電流を指します。一方、コモンモードノイズは、複数の導体が同じ方向へ流れる電流であり、流れる経路が異なります。
そのため、対策方法も同じではありません。ノーマルモードノイズではフィルタやデカップリングなどが検討される一方で、コモンモードノイズではグラウンド設計やコモンモードチョークなどを組み合わせて対策を検討します。
よくある誤解として、「すべてのノイズは同じ方法で対策できる」という考え方があります。しかし実際には、ノイズの種類によって発生要因や伝搬経路が異なるため、それぞれに応じた対策を検討することが重要です。
コモンモードノイズが発生する原因
コモンモードノイズは、一つの要因だけで発生するものではありません。基板レイアウトやグラウンド構成、スイッチング動作など、複数の要素が組み合わさることで発生する場合があります。ここでは、代表的な発生原因について解説します。
浮遊容量と寄生結合
コモンモードノイズは、浮遊容量(部品や配線間に意図せず生じる容量)や寄生結合によって発生することがあります。
例えば、高速でスイッチングする回路では、配線や部品間に形成される浮遊容量を介して不要な電流が流れる場合があります。この電流が筐体やケーブルへ流れることで、コモンモードノイズとして現れることがあります。
基板設計では、このような寄生要素を完全になくすことは難しいため、配線や部品配置を工夫しながら影響を抑えることが重要です。
グラウンドや配線の影響
グラウンド設計も、コモンモードノイズへ影響を与える要素の一つです。グラウンドが分断されていたり、リターン電流の経路が長くなったりすると、不要な電位差が生じる場合があります。その結果、コモンモードノイズが増加する可能性があります。
また、ケーブルの引き回しや配線レイアウトも影響するため、基板内部だけでなく機器全体の構成を考慮して設計することが重要です。
グラウンド設計について詳しく知りたい場合は、「電子回路のグラウンド設計で失敗しないためのポイント」も参考になります。
コモンモードノイズの対策
コモンモードノイズは、部品を追加するだけで解決できるとは限りません。ノイズの発生経路を把握したうえで、回路設計やレイアウト、EMC評価まで含めて対策を検討することが重要です。ここでは、代表的な対策方法と、設計レビューや評価で確認したいポイントについて解説します。
コモンモードチョークの役割
コモンモードノイズ対策として広く使用される部品の一つが、コモンモードチョークです。コモンモードチョークは、コモンモード電流に対して大きなインピーダンス(交流に対する電気的な抵抗)を与え、不要なノイズを抑えることを目的とした部品です。一方で、ノーマルモードの信号にはできるだけ影響を与えないよう設計されています。
ただし、コモンモードチョークを追加すれば、すべてのノイズが改善するとは限りません。ノイズの発生源や伝搬経路を確認したうえで、適切な場所へ配置することが重要です。
よくある誤解として、「コモンモードチョークを追加すればEMC試験に合格できる」という考え方があります。実際には、グラウンド設計や配線レイアウト、筐体構造なども含めて総合的に確認する必要があります。
レイアウトとグラウンド設計
基板レイアウトは、コモンモードノイズの発生や伝搬に大きく影響します。例えば、高速信号のリターンパスを短く保つことや、グラウンドプレーンの連続性を確保することは、不要な電流経路を抑えるための基本的な考え方です。
また、スイッチング回路と信号回路の配置を見直すことで、ノイズの結合を抑えられる場合もあります。設計レビュー時に次のような項目を確認すると、見落としを減らしやすくなります。
【設計レビューテンプレート】
- グラウンドプレーンが分断されていないか確認する
- リターンパスが長くなっていないか確認する
- ノイズ源となる回路と信号回路が近接していないか確認する
- ケーブル接続部周辺のレイアウトを確認する
- コモンモードチョークの配置位置を確認する
EMC試験で確認したいポイント
設計段階で対策を行っていても、EMC試験では想定していなかったノイズが確認される場合があります。そのため、試験結果を設計改善へ反映することが重要です。
例えば、伝導エミッションや放射エミッションの測定結果を確認し、ノイズが発生している周波数帯や条件を整理することで、対策の方向性を検討しやすくなります。次のような内容を記録すると、評価結果を設計へ反映しやすくなります。
【評価記録テンプレート】
- 試験項目(伝導・放射など)
- 発生した現象
- 発生条件
- 実施した対策
- 再評価の結果
EMC試験について詳しく知りたい場合は、「EMC試験の流れと合格のポイント」もあわせて読むことで、評価の流れを理解しやすくなります。
まとめ
コモンモードノイズとは、複数の導体へ同じ方向に流れる不要なノイズ電流であり、EMIや電子機器の誤動作につながる場合があります。ノーマルモードノイズとは流れる経路が異なるため、それぞれの特徴に応じた対策を検討することが重要です。
また、コモンモードノイズは、浮遊容量やグラウンド設計、配線レイアウトなど複数の要因が関係します。そのため、コモンモードチョークだけに頼るのではなく、回路・基板・機器全体を踏まえて評価することが求められます。
次に取り組むこととして、まずは機器内でコモンモードノイズが発生しそうな経路を整理しましょう。続いて、グラウンド設計やレイアウトを見直し、不要な電流経路がないかを確認します。最後に、EMC試験の結果を設計へ反映し、改善内容を継続的に蓄積していくことが重要です。