オシロスコープでノイズを正しく測るための5つの注意点
電子回路のノイズ原因を調べるときに、オシロスコープは非常に役立つ測定器です。電源ラインのリップルやスイッチング波形、リンギング、瞬間的な電圧変動などを確認できるため、回路のどこで問題が起きているのかを切り分ける際に使われます。
ただし、オシロスコープは接続方法や設定によって、実際には存在しないノイズを測ってしまったり、本来あるノイズを見落としたりすることがあります。
この記事では、オシロスコープでノイズを測定するときに注意したい5つのポイントを解説します。
1.プローブのグラウンドリードを長くしすぎない
ノイズ測定で特に注意したいのが、プローブのグラウンドリードです。
一般的なオシロスコーププローブには、先端とは別にグラウンドへ接続するリード線があります。このリードが長いと、配線自身がインダクタンスを持ち、高周波成分の影響を受けやすくなります。
その結果、実際の回路にはないリンギングや高周波ノイズが波形に現れることがあります。
特にスイッチング電源や高速デジタル回路を測定するときは、長いワニ口クリップではなく、スプリンググランドなどを使って測定点とグラウンドの距離を短くするとよいでしょう。
測定対象の近くで、できるだけ小さなループをつくることがポイントです。
2.測定するグラウンド位置を確認する
プローブのグラウンドをどこへ接続するかも重要です。
同じ基板上でも、場所によってグラウンド電位が完全に同じとは限りません。大きな電流が流れる経路やスイッチング回路の近くでは、グラウンドに電圧変動が生じていることがあります。
測定対象から離れた場所へグラウンドを接続すると、その間に発生した電圧変動まで含めて測定してしまう可能性があります。
そのため、基本的には測定したい信号の近くにあるグラウンドを使います。
また、商用電源につながる回路などを測定する場合は、オシロスコープの接地構造にも注意が必要です。誤った接続は短絡や機器破損につながるおそれがあるため、必要に応じて差動プローブなど適切な測定方法を選びます。
3.帯域幅を必要以上に広くしない
オシロスコープの帯域幅が広いほど、より高い周波数成分まで観測できます。
一方で、ノイズ測定では必要以上に広い帯域を使うと、測定したい範囲以外の高周波成分まで表示され、波形がノイズの多い状態に見えることがあります。
たとえば、低周波の電源リップルを確認したいだけであれば、数百MHzまでの成分をすべて表示する必要がない場合があります。
オシロスコープに帯域制限機能がある場合は、目的に応じて20MHz制限などを利用することで、確認したいノイズ成分を見やすくできます。
ただし、高周波リンギングやEMC問題の原因を探している場合は、帯域を狭めすぎると重要な成分を見落とします。
何を測りたいのかに合わせて帯域を設定することが大切です。
4.プローブの倍率と入力容量を確認する
オシロスコーププローブには、1倍や10倍などの倍率設定があります。
一般的に10倍プローブは、1倍プローブと比べて回路への負荷を小さくしやすく、高周波信号の測定にも適しています。
プローブを接続すると、その入力抵抗や入力容量が回路の一部として働きます。特に高インピーダンスな回路や高速信号では、プローブを当てるだけで波形が変化することがあります。
そのため、測定対象に適したプローブを選び、オシロスコープ側の倍率設定も合わせておきます。
また、プローブ補正がずれていると方形波などの形状が正しく表示されないため、必要に応じて測定前に補正状態も確認しましょう。
5.波形だけで判断せず測定条件をそろえる
ノイズ対策の前後を比較するときは、測定条件をそろえることが重要です。
プローブの位置、グラウンド接続点、時間軸、電圧レンジ、帯域制限などが変わると、同じ回路でも表示される波形が変化することがあります。
たとえば、コンデンサを追加したあとにノイズが小さく見えても、同時に帯域幅やプローブ位置を変えていた場合、本当に部品追加の効果なのか判断しにくくなります。
対策を評価するときは、一度に一つの条件だけを変え、測定前後の波形を比較するとよいでしょう。
スクリーンショットや測定条件を記録しておくと、後から原因を整理しやすくなります。
ノイズ測定では測定器による影響も疑う
オシロスコープにノイズ波形が表示されたからといって、必ずしもそのすべてが回路で発生しているとは限りません。
確認方法の一つとして、プローブ先端とグラウンドを同じ測定点へ接続し、どの程度のノイズが表示されるかを見る方法があります。
この状態でも大きなノイズが見える場合は、測定環境やプローブが外部ノイズを拾っている可能性があります。
また、ほかの機器やケーブルの位置を変えたときに波形が変化するか確認することも、原因の切り分けにつながります。
回路だけでなく、測定系そのものも一つの電気回路として考えることが重要です。
まとめ
オシロスコープでノイズを正しく測るには、単にプローブを測定点へ当てるだけではなく、接続方法や設定にも注意する必要があります。
特に、グラウンドリードを短くする、測定点に近いグラウンドを使う、目的に合った帯域幅を選ぶ、適切なプローブを使用するといった点が重要です。
また、ノイズ対策の前後を比較するときは、測定条件をできるだけそろえましょう。
表示された波形をそのまま回路の問題と判断せず、プローブや測定環境による影響も確認しながら原因を切り分けることで、より正確なノイズ測定につながります。