高速信号のリターンパスを乱さないための基板設計ポイント

高速信号のリターンパスを乱さないための基板設計ポイント

高速信号を扱う基板では、信号線そのものだけでなく、「リターンパス」を意識して設計することが重要です。

信号電流は送信側から受信側へ流れるだけではなく、必ずどこかを通って戻ります。この戻り道が不連続になったり、大きく迂回したりすると、信号品質の低下や放射ノイズの増加につながることがあります。

特に高速デジタル信号では、グラウンドプレーンの分割やビアによる層変更などがリターンパスへ影響することがあります。

この記事では、高速信号のリターンパスを乱さないために、基板設計で確認しておきたいポイントを解説します。

高速信号ではリターン電流の経路が重要

信号線を流れた電流は、必ず回路を一周して戻ります。

低周波では比較的広い範囲を通って戻ることもありますが、高周波になるほどリターン電流は信号線の近くを流れようとします。

そのため、多層基板では信号線の直下や直上にグラウンドプレーンなどの基準面を設けることが重要です。

信号線とリターンパスが近ければ、電流ループの面積を小さくしやすくなります。

一方、戻り道が遠くなるとループ面積が広がり、電磁波を放射しやすくなる可能性があります。

グラウンドプレーンを不用意に分割しない

リターンパスを乱す代表的な原因が、グラウンドプレーンの分割です。

高速信号線の下にあるグラウンドプレーンに大きなスリットや切れ目があると、リターン電流はその部分をそのまま横切れません。

その結果、切れ目を避けて遠回りすることになり、信号線とリターン電流の間に大きなループができます。

これによって、放射ノイズが増えたり、近くの回路へノイズが結合したりすることがあります。

高速信号は、できるだけ連続した基準面の上を配線することが基本です。

プレーンの境界を信号線がまたがないようにする

電源プレーンやグラウンドプレーンを複数の領域に分けている場合は、信号線がその境界をまたがないように注意します。

たとえば、信号線の途中で基準面がグラウンドから別の電源プレーンへ変わると、リターン電流がそれまでと同じ経路を通れなくなることがあります。

必要に応じて、基準面同士の間にリターン電流が流れやすい経路を設けることも検討します。

特に高速クロックや高速通信線では、配線だけを見るのではなく、その直下にどのプレーンがあるかまで確認しましょう。

ビアで層を変えるときはリターン経路も考える

高速信号を別の層へ移動するためにビアを使うことがあります。

このとき、信号線だけが別の層へ移動し、リターン電流の基準面が変わると、戻り道が一時的に遠くなることがあります。

たとえば、ある層ではグラウンドプレーンを基準にしていたのに、層変更後は別のプレーンが近くなる場合です。

こうした場合は、信号ビアの近くにグラウンドビアを配置し、リターン電流が層間を移動しやすくする方法があります。

差動信号でも、完全に2本の線だけで電流が往復するとは限らないため、基準面の連続性を確認することが重要です。

高速信号の配線を必要以上に長くしない

配線が長くなるほど、信号線と周囲との結合や信号反射の影響が大きくなりやすくなります。

さらに、リターンパスが乱れている区間が長いほど、ノイズ問題が発生する可能性も高くなります。

そのため、高速クロックや高速通信線は、できるだけ短く、分かりやすい経路で配線します。

不要な蛇行や大きな迂回を避け、ノイズ源や影響を受けやすいアナログ回路の近くを長く通さないことも大切です。

配線長を短くすることは、リターンパスだけでなく、信号反射やクロストークを抑えるうえでも有効です。

不要なスタブや分岐を減らす

高速信号線に長いスタブや分岐があると、信号反射が発生しやすくなります。

また、分岐することでリターン電流の経路も複雑になる場合があります。

複数のICへ信号を配る場合は、信号方式に合わせて適切なトポロジーを選ぶことが重要です。

特に高速な信号では、単純に配線を枝分かれさせるのではなく、デイジーチェーンや適切な終端方法などを検討します。

ノイズ源から高速信号を離す

リターンパスが適切でも、強いノイズ源の近くを高速信号が通ると影響を受けることがあります。

スイッチング電源のスイッチングノード、インダクタ、モーター駆動回路などは、高周波ノイズの発生源になりやすい部分です。

高速信号線は、こうした回路からできるだけ距離を取り、長い距離にわたって平行に配線しないようにします。

また、高速信号同士の間隔も確保し、クロストークを抑えることが大切です。

回路図だけでなく基板上の電流経路を見る

リターンパスは、回路図だけでは確認しにくい部分です。

回路図上ではすべて同じGNDにつながっていても、実際の基板ではプレーンの形状やスリット、ビアの位置によって電流経路が変わります。

そのため、基板設計では信号線を引いたあとに、その下の基準面が連続しているか、リターン電流がどこを通るかを確認します。

「信号線をどこに通すか」だけでなく、「戻り電流がどこを通るか」をセットで考えることが重要です。

まとめ

高速信号では、信号線だけでなくリターンパスの連続性が重要です。

グラウンドプレーンに切れ目があったり、信号線がプレーンの境界をまたいだりすると、リターン電流が迂回し、電流ループが大きくなることがあります。

対策では、連続した基準面の上を配線する、層変更時にはリターン経路を確保する、配線を必要以上に長くしないといった点を意識しましょう。

高速信号の行きと戻りを一つの電流ループとして考えることが、信号品質の安定と放射ノイズの低減につながります。