伝導ノイズと放射ノイズはどう見分ける?対策の考え方を整理
電子機器のノイズ対策を考えるとき、「伝導ノイズ」と「放射ノイズ」の違いを把握しておくことは重要です。どちらも機器の誤動作やEMC試験の不合格につながる可能性がありますが、ノイズが伝わる経路が異なるため、確認方法や対策の考え方も変わります。
原因を特定しないままフェライトコアやシールド材を追加しても、十分な効果が得られないことがあります。まずはノイズが配線を通って伝わっているのか、空間を介して伝わっているのかを切り分けることが大切です。
この記事では、伝導ノイズと放射ノイズの違い、それぞれの見分け方、対策を考えるときのポイントを解説します。
伝導ノイズと放射ノイズの違い
伝導ノイズと放射ノイズの大きな違いは、ノイズが伝わる経路です。
伝導ノイズは、電源線や信号線、グラウンドなどの導体を通じて伝わります。一方、放射ノイズは、配線や基板、筐体などから電磁波として空間へ放射され、ほかの回路や電子機器へ影響を与えるノイズです。
ただし、実際の電子機器では両者が完全に独立しているとは限りません。配線を流れている高周波ノイズがケーブルから放射されたり、外部から飛来した電磁波が配線へ結合したりすることもあります。
そのため、ノイズ対策では「伝導か放射か」の二択で考えるのではなく、どこで発生し、どの経路を通って影響しているのかを確認することが重要です。
伝導ノイズを見分けるポイント
伝導ノイズが疑われる場合は、まず電源線や信号線など、回路につながっている配線に注目します。
たとえば、電源を共有している機器を動作させたときだけ誤動作が発生する場合や、ケーブルを外すと症状が改善する場合は、配線を通じたノイズの影響が考えられます。
オシロスコープなどで電源ラインの波形を確認し、スイッチングに同期したノイズや周期的な変動がないかを見ることも有効です。
また、EMC試験ではLISNなどを使用し、電源線を通じて外部へ流れ出すノイズを測定する方法があります。
伝導ノイズが疑われる場合は、発生源だけでなく、ノイズがどの配線を通って流れているのかまで確認しましょう。
放射ノイズを見分けるポイント
放射ノイズは空間を介して伝わるため、配線を外しただけでは症状が消えない場合があります。
たとえば、特定の回路やモーター、スイッチング電源の近くでだけ別の機器が誤動作する場合は、放射ノイズが影響している可能性があります。
また、ケーブルの位置や向きを変えることで症状が変化する場合も、放射や電磁結合を疑う手がかりになります。
基板上のノイズ源を探す場合は、近磁界プローブなどを使って高周波成分が強い場所を確認する方法があります。EMCの放射エミッション試験では、アンテナを使って機器から放射される電磁波を測定します。
ただし、放射ノイズの原因が必ずしも筐体だけにあるとは限りません。長い配線やケーブルがアンテナのように働き、ノイズを放射することもあります。
伝導ノイズの主な対策
伝導ノイズを抑える場合は、ノイズが配線を流れにくくする対策を検討します。
代表的な方法としては、コンデンサやインダクタ、フェライトビーズ、コモンモードチョークなどを使ったフィルタリングがあります。
また、電源ラインのデカップリングを見直したり、ノイズ源と影響を受けやすい回路の電源経路を分けたりする方法もあります。
グラウンド設計も重要です。ノイズ電流の経路が長くなったり、意図しない経路を流れたりすると、別の回路へ影響する場合があります。
部品を追加するだけでなく、ノイズ電流がどこからどこへ流れているのかを意識して対策を考えることが大切です。
放射ノイズの主な対策
放射ノイズでは、ノイズを発生させる部分とアンテナとして働く部分の両方を確認します。
基板上では、高速信号の配線を必要以上に長くしない、リターンパスを途切れさせない、ノイズ源と影響を受けやすい回路を離すといった対策が基本です。
ケーブルからの放射が大きい場合は、シールドケーブルの使用やフェライトコアの追加が有効なこともあります。
筐体から電磁波が漏れている場合は、金属シールドや導電性材料を使用し、開口部や継ぎ目からの漏れを抑える設計も検討します。
ただし、シールドを追加しても発生源そのものが強ければ、十分な効果が得られない場合があります。まず発生源でノイズを抑え、そのうえで伝搬経路を対策することが基本です。
ノイズ対策は発生源・経路・影響先の順に整理する
伝導ノイズと放射ノイズを切り分けるときは、「どの種類のノイズか」だけを見るのではなく、発生源・伝搬経路・影響を受ける回路の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
まず、スイッチング素子やモーター、クロック信号など、ノイズを発生させている場所を確認します。
次に、そのノイズが電源線や信号線を通っているのか、空間を介して伝わっているのかを調べます。
最後に、どの回路や機器が影響を受けているのかを確認します。
この順番で切り分けることで、フィルタを追加するべきか、配線やグラウンドを見直すべきか、シールド対策が必要なのかを判断しやすくなります。
まとめ
伝導ノイズは主に電源線や信号線などの導体を通じて伝わり、放射ノイズは電磁波として空間を介して伝わります。
ただし、実際の電子機器では、伝導したノイズがケーブルから放射されるなど、両者が関係していることも少なくありません。
ノイズ対策を進めるときは、最初から特定の部品やシールドに頼るのではなく、発生源、伝搬経路、影響先を順番に確認することが大切です。
ノイズの伝わり方を切り分けたうえで、フィルタリング、配線、グラウンド、シールドなど、原因に合った対策を選びましょう。